「眠れないときがあるんだ。」
「うん。」
「独りで寝るときなんだ。急にくる。眠るのが怖い。如何しようもなく怖くて、怖さに目をつぶるんだけど、そうして目を瞑っていることが、とても怖くて。」
「何が、怖いの?」
「夢を視るのが。」
「夢。」
「視なくてもよくなった筈の夢にうなされるんだ。僕は許されたのに、ずっとその夢ばっかり、見るんだ。多分、僕は死ぬまで、この夢を見続けるんじゃないかなあ。なんだかそう思うんだ。」
「怖い、夢?」
「うん。僕のせいで人がたくさん死ぬんだ。そういう、夢だよ。」
「……」
「だから僕はあなたに電話をするんだよ。眠るのが怖いから。忘れさせてくれるあなたに、ひどく頼って、依存して、」
「まさる」
「…頼っちゃ駄目だって思うんだ。さみしいなんて、旅に出た僕が言うのなんか間違ってる。分かってる筈なんだ。僕は大丈夫の筈なのに、こんなの、ぼくは」
「ねえ、勝。」


君はさみしいって思いたくなくても、私は凄いさみしいよ。


平短な聲で受話器越しに「わたし、電話、嫌いだな。」と呟かれて、ひきつれるように息をして、また電話しますと短く、涙声を堪えて勝は携帯の通話停止ボタンを親指で押した。


プツッ。
ツー、ツー、ツー。