気がつくと、携帯が壊れるんじゃないかと思うくらい握り締めていた。
またでんわしますなんて。敬語なんて、私にひとつも使った事もないのに。
おかしいのに、笑えない。
ああ、あのこ、今ひとりで泣いてる。
携帯を握って、わたしみたいに抱き締めて、誰にも内緒で、泣いてる。
知られなければ無いのと一緒だと、知らなくても良いほど深く知らされて居るから、彼は泣きたい時、ひとりで泣く。

さみしい。どうして僕だけ。知らない。しりたくない。そばにこないで。触らないで。ひとりにして。わからないくせに。しらないくせに。拒絶するくせに。いなくなるくせに。近寄らないで。さみしいよう。つらいよう。ひとりにしないで。僕も仲間にいれて。手を繋いで。聲を聴かせて。受け入れて。帰りたい。抱き締めて。僕を好きになって。
そばにいて。

全部全部、笑顔で無いことにしている。
ひとへの欲求を全部潰したままで、ひとが極端にこわいままで、君は何処へ行っちゃうの。
やっぱり、君は私が怖いんだね。
我慢を続けて、其れが逃亡にすりかわったことにも気付かずに、君は私をおいていこうとしてるんだね。
でも君は弱いでしょう。もう電話しないとは言えずに、私の聲を聴きに内緒で電話するから。

私はそんな君を、君が愛せないぶんいとおしんで、君が一番聴きたい筈の、「わたしにはあなたが必要よ」を、要らないくらいおなかいっぱいになるまで詰め込むくらいしかできない。

ねえ、でもほんとは、そばにいきたいんだよ。
でも近くに居ると君が怯えて逃げるから、怖がらないように今度は私から、電話をするよ。
聲が震えているだろうけれど。
水分で滲んだ視界の先にある、リダイヤルに表示されているマサルの三文字に、私は繋がろうと通話のボタンを押した。








電話をするよ。