貴方の詞には力が宿って居る。
何時もは云うだけの、上滑りする誰かの意味の薄いそれなのに汚ならしい期待に
満ちた忌むべき言葉が、貴方から発されることで浄化されて後ろめたさを切り裂
く刃物に研ぎ澄まされるような感覚に陥ることさえあるのです。切られて塵に消
えるも、貴方の沼にズブズブと沈むも、私に取っては同じことです。
貴方は、私が言われたい言葉も言われたくない言葉も口にしない。只、柔らかく
染み込んで波紋を指先や髪にまで震わせる優しい其の声だけが耳に響きます。
私は貴方のようには出来ない。何故なら、私は貴方に逢う迄、詞を否定して生き
てきたようなものなのだから。
突き落とさない、甘えさせない、唯傍に寄り添うような意味の薄いどうでも良い
ような貴方との日常会話が、私には酷く心安らぐように思えて仕方がないのです
。涯は貴方も同じなら良いと願ってしまうほど。
其れは酷くいけないような気持ちがするのです。あってはならないと、そう思う
のです。貴方との友情を汚してしまうように思えて、居ても立っても居られなくなってしまうのです。
如何してこんなにも自分が言葉を憎むのかを考えました。とても最悪な自覚を覚
えました。
若しかしたら、私は只欲しい言葉を呉れない他者に傍迷惑な絶望をしているにす
ぎないのかも知れません。
若しくは、言われたくないことを云われることを恐れて居るのでしょうか。どち
らにせよ、汚ならしく卑怯で在ることには替わりがないようです。
こうして貴方に言葉を差し上げる術を持たない私に、今でも貴方は好意を抱いて
居て呉れて居るのでしょうか。否、そんなことは問題じゃあない。
私は必要以上に貴方に依存して居るのでしょう。それどころか―――
(波のように揺れて乱れた字面は破れていて後が確認できない) |