「久しぶりだね」
「久しぶりだね。さん元気だった?」
「ボチボチ。勝は、」
「うーん、ボチボチ。」
「なにしにきたの。」
「さんに、会いに。」
「そっか。ごはん、食べた?」
「うーん、お腹すいてないなあ。」
「遠慮?食べてきたの?」
「そんなとこ。ホントにすいてないから。」
「そっか。これ、飲む?」
「僕未成年なんだけど」
「かたいこと言うなよー。ホラグラス。注ぐよー氷は?」
「あ、大きいのいっこ。」
「未成年とかよっくゆうよ。飲み方しってるじゃん。其処の塩勝手に舐めて。」
「ありがと…わ、さんこぼれるこぼれる!」
「ひょうめんちょうりき〜」
「わーホントにギリギリ…」
「ぐっといけぐっと」
「…げえっほ!つ、よ」
「わはは。なに、弱いの?酒。」
「ていうかノドにくるからあんまり好きじゃない…」
「おこちゃま〜煙草は吸ってるんでしょ?」
「あ、うん。…バレてた?」
「バレいでか。臭いっつーの。早いうちに加齢臭するぞ。」
「さんこそ、毎日のんべえは毛穴開きっぱになるよ。」
「わーいやーなヤツ!」
「知ってて好きになったんじゃない。」
「そうだね。」
「…」
「認めると思ってなかったでしょ!なーんだその顔!まぬけ!」
「さん」
「私ね、君がそうやってさんってさん付けで名前を呼ぶの好きなんだよね。笑うときに顔をくしゃくしゃにするのもすき。何かあるとすぐ手を繋ごうとするのも。子どもっぽくてすぐ正論かましちゃうのもばかだなーとか思ってたけど、私には出来ないことだからやっぱり好きだったよ。」
「…やめて」
「もっといっぱいあるよ。今思い出せないけどたくさん。全部とかそんなんじゃ足りない。君を取り巻くいっぱいがとても羨ましくて、手に入らなくて、羨ましかった。あれ、二回言った。あはは。酔っぱらってる。」
「お願いだから、やめて。」
「なんだよー連れないな。せめてさ、僕もさんが好きですーくらい言いなよ。何時も言ってくれたじゃない。」
「さん、なんで、此処に、居るの。」
「私が君が此処に来ると思ったから。君がわたしが此処にいると思ったから。」
「嘘だ。嘘ばっかり。」
「それは、君も同じだよ。君は私にずっと嘘を吐いてた。」
「さん、死んだんだよね。」
「うん。死んだよ。さっき君、お通夜にでたでしょ」
「其処に、居た、よね。」
「居たよ。ていうか、見たでしょ?」
「うん。居た。」
「死化粧だっけ?アレ結構厚化粧だよね。なんか似合わなくない?」
「ううん。綺麗だったよ。」
「マジで?嬉しいな。あんまり化粧しなかったけど、勝がそういうならもっとしてもよかったな。」
「さん」
「それ。」
「…?」
「名前、もっと呼んでよ。好きって言って。多分もうちょっとで」
「さん」
「最後の時間が来るから。」
「いやだ」
「しょうがないじゃん。」
「…いやだ」
「もー泣くなよう。ばかだな。私とのお別れは済んだってのに。」
「だって、、さん、此処に、居」
「だからだよ。来なきゃよかったんだよ。そしたら変に期待せずに、もう居ないねさよなら、で済んだじゃないの。」
「さん、待って、たって、言っ、た。」
「言ってないよ。聞き間違いだよ。耳も悪くなっちゃったか。」
「『私が君が此処に来ると思ったから』って、言った。」
「…」
「連絡が来たときも、棺桶の中を見たときも、本当は生きてるんじゃないかって、おもってた。電話じゃなんだか信じられないし、みみこさん普通に寝てるみたいで、鼻になんか詰めてるし着物似合わないし白い花とかぶっちゃけキャラ違いだし鼻になんか詰めてるし鼻になんか詰めてるし、正直なんか、笑えてきて。なんでこんなところいるんだろうとか、おもって、なのに、なんでなんだろう、みみこさんなんでだと思う?」
「なにが?」
「こうやって話してる筈なのに、一緒にお酒飲んでるのに、ああ、このひとは死んだんだってやっと解った。さんがみんなをからかっただけだって思いたいのに、本当の事だったんだって実感してるんだ。おかしいね。さんは此処に居るのに。」
「本当の事だよ。つーか鼻の脱脂綿のことはあんま言うな!角度で見えるまじやばいって一番に思ってたのは誰でもない私なんだっつーの」
「心不全って、なにそれ…呆気無さすぎ。なんで、どうして、こんな」
「勝だって知ってたじゃん。身近なひとって結構すぐ死んじゃうって」
「知ってたけど、なにこれ、ひどい。あんまりだ。僕もっといっぱい、さんとしたいことあったのに、置いてくんだ。ひどいよ。一緒に居るって約束、したのに!」
「なー勝、セックスってさ。」
「え…ちょ…さん人のはなし聞いてるよね。」
「AVみてーにさ、一緒にいくとかそんなの殆んどないよね。君はさ、優しかったけど、セックスのときも凄い優しかったけど、そうじゃないやつも居たよ。ひどいヤツ。ゴムしろっつってんのに無視するしなんか自分勝手だし、痛ぇし。もう最低なのな。そんなんばっかだったから、私セックス凄い嫌いだった。」
「…」
「でもね、君はそうじゃないってわかったとき、凄く嬉しかったんだよ。その、なんだ、デヘへ、照れる。」
「…」
「愛されてるって、こういうことなんだって、思ったの。君とのセックスは、好きだったよ。大好きだった。嫌なようにとか、そんなふうに見せてたけど、嬉しかったの。ほんとだよ?疑ったりとかしちゃ、やだよ。」
「さん」
「もっといっぱい、しとけばよかったよねえ」
「…うん。」
「セックス、したいね。」
「…したい、ね。」
「ふふふ、素直になっとけば、よかったな。」
「…今からでも、間に、合わない?」
「…ううぅん、どうだろうな。勝、試してみたい?」
「倫理コード違反?」
「や、そうゆーの如何でもいいし私。つーか、酒飲んでるけどへーき?勃つ?」
「一杯だけだから、大丈夫だと思う。」
「よっし。じゃあさん大奮発だよ。とりあえず一発チャレンジゴーで。」
「…こういうの、なんていうんだっけ。」
「死後交渉?うひーエログロナンセンス!」
「そういうのもあるけど、なんかこう、もうちょっといい言葉ない?」
「いい言葉かどうかは知らないけど、ひとつ、知ってる。」
「…ん?」
「愛だけは愛を、殺さない。」
祝杯。