「何故は背を丸めている。もっと確り立てばいい。あまり良い印象を与えないだろう。」
移動教室の帰りだった。私の猫背を咎めた綺麗に伸びた背筋の男の子は、その内股も過ぎれば不格好だと上履きを指差す。遠慮はない。
「身体測定、厭なの。」
「…は?」
「また背が伸びてるかもしれないでしょ?厭なの。友達が私のこと首曲げて見るのも厭。男の子にデカ女とか陰口叩かれるのも、厭よ。」
刀也さんは眼を丸くして、私はそんなことは言わないと頚を振った。そんなのは知ってる。面と向かって言うのは陰口じゃないし、人の外見を揶揄したりなんて刀也さんはしない。
少学校の頃から妙に身体の成長が早かった。思えば生理も早かったので、発育が良いなと親戚に云われることも多かった。そして其れが無性に厭だった。中学校の終わり頃には今の身長になっていて、それを隠すために背を丸めることを覚えた。高校に入学してからは身体測定の日には必ず休んでいる。去年も今年もあの足の裏が冷たい厭な器具には乗っていない。地面と視覚の間隔がまた延びて居るように感じるのは錯覚だろうか。良くは解らないけれど、最近は猫背が酷くなって居ることにも自覚があった。たぶんしっかり背中を伸ばしたら、目の前の男の子より遥かに目線が上なのは確かだ。
もし背筋を伸ばした途端に厭な顔をされたらどうすれば良いだろう。
は背を丸めて居るのに顎を出さないだろう。」
目線が私より少し低い男の子は、中途半端に高い掠れた声で言った。其れは良いのだがと優しい声を出した。
「必ず下を向いている。眼が合うのが少ないから、勿体無いと思っただけだ。」
最後に済まなかったと謝られた。くるりと踵を返すのと一緒に、綺麗な色の薄い長めの髪が揺れる。置いて行かれるのは嫌だ。そう思って小走り距離を詰めた。
彼は私が隣に来るまで待っていた。
「何センチあるんだ?」
「…170…ちょっと。」
「いいなあ。私はあまり背が伸びないから羨ましい。」
屈託なく言って、刀也さんは可愛らしい歳相応の溜め息を吐いた。
「小さい頃に鍛えすぎたのかも知れない。」
「そんなにがっちりしてるようには見えないわ。」
「褒め言葉にならん。」
「あんまり筋肉が付きすぎても気持ち悪いだけよ。」
「金剛番長迄と言わないが、せめて卑怯番長くらいは…」
「やだ!そんなのやだ!」
「ははは。」
眉を寄せて声を上げて、刀也さんは笑った。子供のような可愛らしいあどけない声は視聴覚室前の廊下に少しだけ響いた。

その裏表のなさが私は好きなのだ。等身大の羨望の中にある清らかさを羨みながら、私は横斜め下の彼の顔を首を曲げてじっと見る。







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