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岩融、ぼくはきょう、空き地へいったのです。 ほら、本丸のすみになんにもつかわれてない、草のはえたはらっぱがあるでしょう。あそこにまえから、五虎退や愛染といっしょに秘密基地をつくろうとけいかくをたてていたのです。 ぼくはとってもそのていあんがきにいって、とてもたのしみでいてもたってもいられなくて、秘密基地をつくるためのちょうどいい木やらひもやらをあつめて、あとでくみたてるだけでいいようにそこにおいておこうとおもったのです。ごうりてきでしょう?あしたは内番がいちにちじゅうない日でとってもきちょうですから、ごはんいがいはそこにいられるようにして、秘密基地ができあがったら、主がくだすったピーターパンとロストボーイのように、たんけんごっこをする予定でいたのです。あとで、主をむかえにいくのはぼくです。ぼくはピーターパンですから。 だって、ぼくたちのうちでとんだりはねたりがいっとうとくいなのはぼくでしょう?ようせいのおこなはないからとべはしないけれど、ゆうかんでひらりと一条橋をとびまわる牛若丸は、ピーターパンのようではありませんか。ぼくはにほんのピーターパンの懐刀だったのですから、きっといっとうぴったりです。ピーターパンはウェンディをむかえにいくものでしょう?影をおいかけてきたふりをして、ウェンディをネバーランドにごしょうたい。そして、ぼくとロストボーイのみんなと、ウェンディでだいぼうけんをするのです。とってもすてきだとおもったので、ぼくはそうしようとおもっていたのです。 あれは、蜻蛉切がよんでくれました。ぼくはまだいまの字になれなくてよめなかったので、ええ、いまの字がむつかしいからいけないのです。むかしはちゃんとよめていました。でもいまはよめないので、蜻蛉切に寝物語としてよみきかせてもらっていたのです。そのときに、蜻蛉切はおとなだから、きっとフック船長ですねといったら、蜻蛉切は「ジョリーロジャー号の船長ですね。それなら私にぴったりかもしれません。」そうわらっていました。 そう、蜻蛉切。 いたのです。空き地に。 ぼくがなんどめかのおうふくで、竹やらおおきなはっぱやらつるやらをたくさんあつめおわったころあいでした。じっとだまってむこうを…本丸をかこう塀のほうをむいて、じっとしていました。てにながいものをもっていて―――槍?ちがいますよ岩融。あれはスコップ、掬い鍬でした。掬い鍬を杖にして、ひだりてをおいて、なにかをじっとかんがえていたようでした。 ぼくは、もしかしたら蜻蛉切がぼくらのしようとしていることをどこかでしって、いっしょにてつだってくれるものかとおもったのです。掬い鍬はどうやってものおきからかっぱらってくるか、愛染といっしょに思案していたものですから、むだんでかりてはよくないとないてうるさかった五虎退がたのんだのだと、そうおもったのですよ。だからこえをかけようとしたのです。ぼくはここです、てつだってくださってありがとうといおうとしたのです。 そうしたら、冷たい手に口をふさがれました。 とつぜんでとてもびっくりしました。びっくりしすぎて声がでないくらいでしたから、ほんとうに、よっぽどびっくりしたんです。ふりむいたら、主だったんです。冷たい指は主のものだったのです。 主は、きっとぼくにあててるつめたい指とおんなじくらいつめたい、もうかたほうの手の指を唇にあてて、しーっと声をださないようにぼくにいいました。それから、そっとつみあげてあった資源の影へかくれました。ぼくはふしぎでたまらなくて、どうしてかくれるのか主へききたかったのですが、なんだかこわくなってしまったのです。 だって、きづいちゃったんです。蜻蛉切はいつまでもそこでじっとしていて、顔がみえなくてなにをかんがえているのかまったくわからないのです。もしぼくたちをてつだいにきたのなら、きっとぼくたちのくるだろう方向をむいてまっているだろうし、そうじゃなかったとしても、どうしてそんなところをみているかわからなかったのです。 蜻蛉切は、下を向いていました。あごのかくどがそうでした。塀のすみっこの地面をじっとみつめて、まったくうごかずに、なにかをかんがえていたのです。地面にはなんにもないようにみえました。そんなところをみてただじっとしてるなんてって、なんだかぞっとしたのです。 ぼくは、主と本丸の縁側までかえってきました。内番をさぼってたので、ぼくおこられるかとおもったんです。でも、主は、なんにもいいませんでした。ないしょですよ、ぼく、なにがなんだかわからなくて、こんらんして、すこしないてしまったのです。主はあたまをなでて、いつもみたいにおひざにのることをゆるしてくださいました。きょうは、今剣に私がご本をよんであげましょうねと、なぐさめてくださいました。 あれはなんだったのでしょう。ぼくは、なにをみたのでしょう。蜻蛉切はどうして自分はフック船長にぴったりだとわらったのでしょう。ジョリーロジャーとは、いったいなんなんでしょう。主はなんにもおしえてくださいませんでした。きっとあのときの蜻蛉切はフック船長だったのですね。だから主はぼくをかくしたのかなあ。フック船長からウェンディを守るのはぼくのはずなのに。 フック船長は、掬い鍬を持って立っていたのです。もしかして、あそこには宝がうまっていたのかな。 ねえ、岩融、どうしてそんな顔をしたんですか。 あすこにはやっぱりなにかがうまっているのですか。 フック船長は、なにをうめているのですか。 ウェンディはどうしてそれをしっていたのですか。 岩融、そんな顔をしないで。ぼく、こわい。 ねえ、ねえ、 あすこにはなにがうまっていたのですか。 |